2023.05.26
近年、建設作業の生産性と安全性を向上させるため、無人化施工技術の開発が進められています。特に自然環境の影響が厳しい水中では、建設機械を水上から遠隔操縦する技術の開発が進められており、その実現には、建設機械の位置情報を精度よく安定して把握することが不可欠です。陸上や海上では電波を用いた全地球測位システム(Global positioning system; GPS)が活用できますが、水中では電波が届きにくいため、深海探査などで活用されている超音波による測位システムを応用しています。しかし、浅海域や港湾部などでは、海面・海底・構造物などで超音波が多重反射しやすいマルチパス環境であることから、既存の水中音響測位システムでは、安定した測位を実現することが困難でした。
あおみ建設は、2018年から筑波大学と共同で、測位に不要な反射波を排除する信号フィルタリング技術を有する、耐マルチパス水中音響測位システム(水中版GPS)の開発に取り組んできました。この技術は、水深や構造物の有無による影響を受けず、水中の位置を安定かつ精度良く計測できるものです(2022年5月22日付プレスリリース)。
2022年には、 (1) 耐マルチパス水中音響測位システムの新しい研究成果(反射が顕著なコンクリート製のプールで移動体の位置を安定かつリアルタイムに計測できることを実証)を学術誌で発表するとともに、(2) 水中作業用建設機械(水中バックホウ)の水中での位置を特定する技術として実工事で運用を開始しました。この研究成果が海洋音響技術に関する優秀な技術開発の業績として認められ、この度、海洋音響学会の「業績賞」を受賞しました。
今後は、水中ドローンを利活用したインフラ点検の効率化や沿岸パトロール業務、水産分野への応用など、他産業でも活用していただけるように、引き続き技術開発を推進していきます。