特許第7049572号「水中測位システム及び方法」
出願人:あおみ建設株式会社 / 国立大学法人 筑波大学
耐マルチパス水中音響測位装置とは
耐マルチパス水中音響測位装置「そこにイルカ」は、従来の水中音響測位装置では測位が難しかった浅海域かつ付近に構造物がある環境下で、安定して高精度に測位できる測位装置です。
港湾工事の現場では、音響測位装置の送波器から発信された超音波が、水面・海底・構造物などで反射し、受波器に信号が混在して届いてしまいます。このような現象はマルチパスと呼ばれ、マルチパスの影響により、従来の音響測位装置では安定した測位を実現することが困難でした。耐マルチパス水中音響測位装置「そこにイルカ」は、混在する信号の中から測位に不要な反射波をフィルタリングすることで、安定して高精度な測位を実現しています。
測位演算の手順
第1ステップ:測位対象エリアをメッシュで区切り、時間窓DBと受信信号を照合して、測位対象が存在するエリアを特定する。
第2ステップ:特定したエリアに対応する時間窓で反射波をフィルタリングして直達波を特定し、精密な測位演算を行う。
機材構成
水中バックホウマシンガイダンスシステムへの応用
防波堤工事が行われる浅海域では、マルチパスの影響で、従来の水中音響測位装置では、水中バックホウの位置を安定して計測することが困難でした。
耐マルチパス水中音響測位装置「そこにイルカ」を、水中バックホウ専用に開発したバックホウガイダンスシステムの測位装置として組み入れ、水中作業の生産性向上に取り組んでいます。
使用実績
工事名:令和4年度 石垣港(新港地区)防波堤(外)築造工事
発注者:内閣府 沖縄総合事務局 石垣港湾事務所
業務名:令和5年度 浮上式音響測位装置及び水中ICT建機に関する実験等補助業務
発注者:(国研)海上・港湾・航空技術研究所 港湾空港技術研究所
2023年 海洋音響学会「業績賞」受賞
あおみ建設は、2018年から筑波大学と共同で、測位に不要な反射波を排除する信号フィルタリング技術を有する、耐マルチパス水中音響測位システム(水中版GPS)の開発に取り組んできました。2022年には、 (1) 耐マルチパス水中音響測位システムの新しい研究成果(反射が顕著なコンクリート製のプールで移動体の位置を安定かつリアルタイムに計測できることを実証)を学術誌で発表するとともに、(2) 水中作業用建設機械(水中バックホウ)の水中での位置を特定する技術として実工事で運用を開始しました。この研究成果が海洋音響技術に関する優秀な技術開発の業績として認められ、2023年に海洋音響学会の「業績賞」を受賞しました。
掲載論文
発行年月 | 学術論文等の名称 | 著者 | 発表雑誌名 |
---|---|---|---|
2021年10月 | 直達波到達時間群を用いる水中音響測位 | 吉原 到 海老原 格 水谷 孝一 佐藤 優磨 |
第42回超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム講演論文集, Vol.42, 2E3-4, (2 pages). |
2022年6月 | Underwater Acoustic Positioning in Multipath Environment Using Timeof-flight Signal Group and Database Matching | T. Yoshihara T. Ebihara K. Mizutani Y. Sato |
Japanese Journal of Applied Physics, Vol.61, pp.SG1075_1-SG1075_10. |
2022年9月 | 音波の伝搬時間群とデータベース照合を用いたマルチパス環境下における移動体の水中測位実験 | 吉原 到 海老原 格 水谷 孝一 |
土木情報学シンポジウム講演集,Vol.47, pp.293-296. |
2023年3月 | Trial Experiment of Positioning of Underwater Backhoe Using Time-of-flight of Acoustic Signal Group and Database Matching for Realization of Unmanned and Remote Underwater Construction | T. Yoshihara T. Ebihara K. Mizutani |
Proceeding of the International Symposium on Underwater Technology (UT23), pp.263-267. |
2023年3月 | 音波の伝搬時間群とデータベース照合を用いたマルチパス環境下における移動体の水中測位実験 | 吉原 到 海老原 格 水谷 孝一 |
土木学会論文集,Vol. 79, No.22, pp.22-22012_1-22-22012_8. |
2023年5月 | 耐マルチパス水中音響測位技術の開発と水中バックホウの水中測位への応用 | 吉原 到 海老原 格 水谷 孝一 |
海洋音響学会2023年度研究発表会講演論文集,23-18, pp.53-56. |
2023年10月 | 耐マルチパス水中音響測位技術の開発と水中バックホウの水中測位への応用 | 吉原 到 海老原 格 水谷 孝一 |
海洋音響学会誌, Vol.50,No.4, pp.123-133(2023). |
掲載雑誌
発行年月 | 掲載雑誌の名称とタイトル | 著者 | 発表雑誌名 |
---|---|---|---|
2023年1月 | 港湾空港技術研究所 技術情報誌「PARI」 3.Close Up 現場からの報告 「水中施工機械操作を支援するマシンガイダンスの導入」 |
- | Vol.50, pp.8-9. |
2023年4月 | 総合土木技術誌「土木施工」 建設機械自動化・自律化の研究と活用事例 「海洋土木の未来に資する水中音響測位技術の開発 水中バックホウ位置推定への応用」 |
吉原 到 海老原 格 水谷 孝一 |
Vol.2023-4, pp.104-107. |
2024年2月 | 日本建設業連合会 広報誌 「ACe 建設業界」 2024.2月号 P28~P33 [推しゲン]潜水業務を変える!新技術がつくる新しい働き方 令和5年度石垣港(新港地区)防波堤(外)築造工事 |
- | Vol.154, pp.28-33. |
過去のプレスリリース
-
2022.05.12
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2023.05.26
関連リンク
水中バックホウ・ビッグクラブ
潜水士が人力で行ってきた水中での均し作業を機械化した技術です。