2023.03.17
令和4年度インフラDX大賞で「優秀賞」を受賞
あおみ建設株式会社九州支店(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:河邊知之)は国土交通省九州地方整備局発注「令和3年度八代港大築島土砂処分場地盤改良工事」にてインフラDX 大賞の「優秀賞」を受賞しました。
インフラDX大賞は国土交通省がインフラ分野において、データとデジタル技術を活用して建設生産プロセスの高度化、効率化、国民サービスの向上等の改革につながる優れた実績をベストプラクティスとして水平展開するため、表彰を行うものです。
(平成29年度から「i-Construction大賞」として実施しており、今年度改称)
表彰状の授与式は2023年3月17日に国土交通省(東京都千代田区)で行われ、国土交通大臣より表彰を受けました。
取組概要
八代港では航路の増深を実施しており、それに伴い発生する浚渫土砂の受入れ場所の確保のため、土砂処分場の整備を進めています。
本工事において、土砂処分場護岸の築造箇所に厚く堆積した軟弱地盤層の海上地盤改良工として、海上地盤改良ICTシステムを活用し、サンドコンパションパイル(以下SCPと表記)の施工に取り組みました。
海上地盤改良ICTシステム構築の背景
現在、国土交通省ではICT活用工事の取り組みが進められています。当社はICT海上地盤改良工(SCP)の基準化に先立ち、可視化の難しい海上地盤改良工の施工の見える化を推進するために海上地盤改良ICTシステムの構築を行いました。
DXに向けた海上地盤改良ICTシステム構築の課題
①現況のSCP船は船舶製作から相当年数が経過しており、SCP施工管理システムからデジタルデータが得られないなどDX対応が遅れている状況であった。
②海底地盤を改良するため、目視により施工管理する事が不可能であった。
③SCPの施工管理は施工に精通した現場担当者やオペレーターに依存しており、他者による確認が容易ではなかった。
④陸上の現場事務所の担当者への情報共有に時間を要していた。
海上地盤改良工ICTシステムの構築内容と特徴
【海上地盤改良工ICTシステムの主な構築内容】
①作業船舶よりデジタルデータを直接取得するシステム。
②①を基にICTで施工管理を行う基幹システムの構築。施工管理には事前のマルチビーム測深による事前測量データやボーリングデータから取得された想定打ち止め層を2D、3D表示する事を可能とし、さらに「各種計器の監視システム」・「クラウドシステム」を付帯することにより、リアルタイムで遠隔から施工状況を確認できるシステム。
上記のシステムを構築することで施工時の海底地盤情報を確認しながら施工する事を可能にし、打設位置や打設深度の思い違いや間違い等のヒューマンエラーやオペレーターの労力軽減を目指しました。
基幹システムの構築は既存のICTシステムを活用し、必要な機能を付帯、改良する等のカスタマイズを行う事で実現しました。また、各種計器の監視にはセンサーを追加してデジタルデータを取得する等の取組と遠隔監視には既存のクラウドシステムをカスタマイズしてシステム全体を構築しました。
【海上地盤改良工ICTシステムの特徴】
①起工測量データとして、事前海底地盤データ(マルチビーム測深等による点群データ)をX・Y・Z(位置+深度)形式で取り込み3Dの海底地形として表示できます。また、事前ボーリングデータより想定した打ち止め層をX・Y・Z(位置+深度)形式で取り込み、3Dで表示できます。想定打ち止め層を確認しながら施工する事により確実な打ち止め管理が実現できます。
②事前にSCPの3D設計データを取り込み、SCP施工時ケーシング状況(断面・深度)と海底面、想定した打ち止め層等をリアルタイムに可視化(2D及び3Dで)することで、オペレ—タ—が比較管理でき、ヒューマンエラーの抑制と確実な施工が可能となりました。
③SCP打設杭毎の断面・深度・海底面・想定打止め層・仮想打止め位置等を3D表示によりリアルタイムで立体的に確認ができるようになった他、施工完了後には打設した杭を施工曜日毎に着色することで従来よりも進捗図の作成が容易となり、仕事の効率化および施工の確実性向上に繋がります。
④海上SCP船の船体位置を最新のGNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)により、高い精度で誘導管理ができるSCP船体誘導システムを搭載しており、正確な施工位置管理が可能です。
⑤海上SCP船の打設に伴う海底面の盛り上がり状況を可視化することにより、施工途中で杭長データを変更、そのデータを表示画面に反映できる機能を搭載しています。変更されたデータはその都度管理画面に反映されるため、リアルタイムで施工状況を確認することが可能となります。
⑥SCPケーシング打設速度、電流抵抗値等の計測データをグラフにて表示するモニタリング機能を搭載する事により、施工中のトラブル監視を実現しました。ケーシングの貫入速度と電流値をモニタリングする事により打ち止め層の判定にも使用できます。
⑦現場事務所においても、パソコンから遠隔でSCP船の動向や施工の進捗状況が確認することができ、今までオペレーターに依存していた管理情報を現場担当者にも同時に共有することで、施工状況の可視化や施工の確実性向上に繋がります。
海上地盤改良工ICTシステムの今後の展開
本システムは旧来のSCP作業船舶のアナログな管理装置のDX化を実現し、データ活用できるシステムを構築しています。
今後もこのシステムを活用し、施工実績を蓄積していくと共にSCP打設データをBIM・CIM属性データと関連付け、自動で出来形・品質管理データを集計し出力できる機能などを追加していき、施工の確実性を高め、効率化を推進し、労働生産性の向上を図っていきたいと考えています。
◆本件に関するお問い合わせ
あおみ建設株式会社
〒101-0021 東京都千代田区外神田2-2-3
技術開発部 井上 Tel:03-5209-7869